最後のクエストイベント(トリップの日記)
暗闇の中で、誰かの叫び声が聞こえる。
燃えさかる馬車。きらめくナイフ。
ああ…そうだ。これは俺が知っているもっとも古い記憶だ。
俺の両親は、俺と一緒に馬車に乗っている最中、何者かに襲われ、殺された…。
俺がまだ3歳くらいの頃だった。
両親の顔は覚えていない。1つだけ覚えているのが、この惨劇の時に、俺の名を呼ぶ声だけだ。
「ト…リップ…。」
その後は覚えていない。馬車を襲った何者かは、俺の命は奪っていかなかった。
そしてどうやら、街道を行くプロンテラ騎士団に偶然発見・保護されたらしい…。
その団に所属していた、騎士の一人が、俺を養うことになって…。
初めて、これから父親となる騎士に連れられて、
これから自分のすみかとなる家に連れられたときのことは、今でも忘れない。
家には、新しい母親と、新しい兄がいた。病弱な兄だった。太陽の光に長時間照らされただけで、動けなくなるほどだった。
真っ白な顔を、仮面で太陽から隠しながら…それでも、俺に優しい笑みを浮かべてくれた…。それがライカーだった…。
ライカーからはたくさんの事を教えてもらった…。アナルにつっこんでいいもの・悪いもの。
仮面のすばらしさ。アナルにつっこんでいい仮面・悪い仮面。
電波をすぐに受信できる10の方法。
両親を殺され、完全に冷え切っていた俺の心。
新しい両親や、兄とかかわっていくなかで、徐々に暖まっていくのを感じていた…。
「兄さん、ボクにも見えたよ!ジェリーがみえたよ!」
『そうだろう?他の人には見えないんだ。彼は、電波を拾える人にしか見えないんだよ。』
「や〜い、兄さん、ここまでおいで〜〜」
『このぉ、俺の【松子デラックス】仮面をかえせよぉ〜〜はははは・・・ごほっごほっごほっ』
「だ、だいじょうぶ?」
「兄さん、ボクも水見式を試してみたけど…。グラスの中の水は何もかわらないよ。」
『どれどれ…。(ペロッ)ふむ、甘くなっている。お前は、変化系だな。』
…楽しい日々だった…あの日までは…!!
『トリップ…俺は、旅に出ようと思う。』
「えっ!? そんな、だいぶ体が丈夫になったからっていっても…無茶だよ…!どこにいくの!?」
『さあ、どこだろう…。俺は、ずっと冒険者になりたかったんだ。いろいろな仲間と一緒に、いろいろな所に行きたいんだ…!
そうだったよね?ジェリー?』
「兄さん!!」
『トリップ、お前も来るか?ジェリーも呼んでるぞ?』
…俺は行かなかった。ジェリーが手招きしていたが、俺は顔を伏せたまま、何も言わなかったんだ。
セッカク手に入れたはずの、俺の家族。俺の兄。
それが…どこかにいってしまうなんて…信じられない…信じられない…!!!!
裏切られた絶望と 怒りと 悲しみと…すべてが折り混ざって、どうして良いかわからなかった。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
「…。」
俺は目を開いた。夢を見ていたようだ。
…もうずいぶんと、昔の夢だ…。
あの男…俺を裏切ったライカーのギルド「ヴィンランド・サガ」のたまり場で、ハイドをしてしばらくたつ。
みると、メンバーと俺の手下:ユーリが話をしている。どうやら作戦が始まったようだ。
俺は腰を上げた。
ユーリが「名無しのプレゼントボックス」を無造作に投げた。
即座にハイドを解除し、拾う。そのままハエの羽を使い、飛び去った。
さあこい、ヴィンランド・サガの野郎ども。
何が仲間だ。何がギルドだ。お前らのつながりなんぞ、俺がめちゃくちゃにしてやる。
1人という事がどれだけ強いのか、見せてやる。
10分後には、俺はお前達の骸の上で高笑いをしているだろう。
…10分後。
はい負けましたが何か?
キートン山田「後半に続く〜」